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金沢地方裁判所 昭和29年(ワ)271号 判決 1957年3月20日

神戸市葺合区琴緒町四丁目五

原告

同和建設産業株式会社

右代表者取締役

北口末男

右訴訟代理人

芝芳雄

金沢市石浦町八四ノ一

被告

石川県商工信用組合

右代表者

山上恒吉

右訴訟代理人

村沢義二郎

当事者参加人

右代表者法務大臣

中村梅吉

右指定代理人

宇佐美初男

門野幸栄

主文

原告並に参加人の各請求を棄却する。

訴訟費用中、参加によつて生じた部分は参加人の負担とし、その余の部分は原告の負担とする。

事実

原告の請求の趣旨

被告は原告に対し金二百四十万円及びこれに対する昭和二十九年四月六日より完済まで年六分の割合の金員を支払いせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

並に仮執行の宣言を求む。

請求原因

一、原告は土木建築工事請負を業とする会社であり、被告は預金の受入れ金銭の貸付等を業務とする金融機関である。

二、原告は訴外三興物産株式会社との間に締結した建築用鋼材の売買代金の引当として昭和二十九年三月八日金二百四十万円を富士銀行富山支店振出額面金二百四十万円の小切手にて被告に当座預金として預入れた。

三、右訴外会社は原告との鋼材の売買契約を履行しないので原告は被告に対し右当座預金二百四十万円の払出しを請求したが、被告はこれに応じないので右金二百四十万円及びこれに対する払出し請求の日の翌日である昭和二十九年四月六日以降完済まで年六分の遅延損害金の支払を求める。

証拠

甲第一号証の一、二、第二乃至第四号証、

証人盤若正弘、衛藤力、瀬川孝一。

被告の答弁

原告並に参加人の各請求棄却の判決を求む。

一、原告の請求原因第一項の事実は認めるが第二項の事実は否認する。

二、原告は富士銀行富山支店振出額面二百四十万円の小切手で預金したというが、この小切手というのは持参人払式のものでなく訴外三興物産株式会社を受取人とする記名式のものであり、小切手上の権利者は明瞭に三興物産株式会社である。原告は日本専売公社の工事を請負い、専売公社は千三百万円の前渡金を富士銀行の原告の口座へ払込んであつたが、この前渡金の払出手続は一般よりも厳格にせられ、(一)原告からその支払先を指定した払戻依頼書を提出し、(二)その指定支払先が銀行に預金口座をもつているときはその口座へ直接払込み、(三)口座のないときはその指定支払先を受取人とする記名式小切手を振出し、原告はこの小切手をその指定支払先へ交付する、指定支払先はこれを現金化して受領するという順序になつていたのである。前記二百四十万円の小切手はこの順序によつて右訴外会社に交付せられたのである。昭和二十九年三月九日頃被告は右訴外会社から前記二百四十万円の小切手の取立を委任せられたので三井銀行を通じて富士銀行より取立て同月十一日頃その二百四十万円を受取つたが、右訴外会社はこの二百四十万円を被告へ当座預金として預入したもので原告が預入したものではない。

三、参加人がその主張の差押並にその通知をしたことは認めるが、その目的である債権が存しないのであるから差押の効はない。

証拠

証人前田進、広瀬毅一、岡田与三郎、中宮辰、金井孝雄

甲第一号証の一、二は不知、甲第二乃至第四号証は成立を認める。

丙第一乃至第四号証の成立を認める。

参加人の請求の趣旨

被告は参加人に対し金二百四十万円及びこれに対する昭和二十九年六月八日以降完済まで年六分の割合の金員を支払いせよ。

並に仮執行の宣言を求める。

請求原因

参加人は原告に対し昭和三十年六月十六日現在滞納税額合計三百七十五万八千九百六十三円の債権を有するが、原告はこれを支払わないのでその徴収の為昭和三十年六月十六日原告が被告に対して有する本件預金二百四十万円及びこれに対する遅延損害金債権を差押えその旨同日附債権差押通知書を以て被告に通知した。

よつて参加人は国税徴収法第二三条の一、第二項に則つて被告に対しその支払を求める。以上の外原告の主張を援用する。

証拠

丙第一乃至第四号証、

右の外、原告の証拠を全部援用する。

理由

証人前田進、広瀬毅一、岡田与三郎、金井孝雄の各証言、証人盤若正弘、衛藤力、瀬川孝一、中宮辰の各証言の一部を総合すると被告の答弁二に於て主張する事実が肯認できる。右認定を覆えすに足る証拠はない。よつて原告並に参加人の請求を理由なしとして棄却し主文の通り判決する。

(裁判官 観田七郎)

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